名も無き市民の会は「労働、経済、外交、安保」政策などに取り組む民間有志のシンクタンク型市民団体です。

新型コロナウイルス流行下での経済的救済政策の実施において 過度の「申請主義」の排除を要請する事務局長声明

令和2年4月17日

名も無き市民の会事務局グループ
名も無き市民の会事務局長 藤原興

 本声明の目的は、昨年末より中国湖北省武漢市を発生源として、現在世界的に蔓延している新型コロナウイルス(COVID-19)の流行状況下における経済的救済政策の実施において、本邦の政府・自治体が過度の「申請主義」と呼ぶべき対応を行っていることの弊害を広く知らしめ、これを糾弾し、是正する目的で発するものです。

 現在までに政府・各都道府県自治体から新型コロナウイルスの流行に対応するための経済的な救済策が多数発表されておりますが、批判も多かった「各家庭にマスクを二枚直接郵送にて支給」するとする対策以外は、ほぼすべて「役所の窓口に申請し、審査を受ける」必要のある申請主義にもとづく対応が採用されています。

 しかし、私たち名も無き市民の会(以下、名無し会)では、役所への「申請主義」による経済的救済対応をコロナウイルスの流行状況下で積極的に採用する姿勢は、根本的に誤っていると考えており、政府・各自治体に対して実施にあたっての姿勢の改善を要請します。

 以下、要請を4つの視点にわけて、名無し会の考え方を述べさせていただきます。

<①申請主義に頼りすぎると、役所の窓口がウイルス感染の温床となりかねない>

 経済救済を「役所への申請」による以上、当然その窓口に多くの国民が出向くことになります。今回のコロナウイルス禍は、その規模からいっても救済策への窓口申請件数は史上最大になることが容易に見込まれ、それは当然「窓口申請者間の感染」をほぼ確実に生み出すことになります。

「新型コロナウイルス感染を広げない」ために緊急事態宣言が発令されたはずであり、これでは台無しであることに、政府・各自治体の責任者はいい加減気が付くべきでしょう。

(*①-1)この声明の作成中に、公明党・山口代表の要請に応じる形で、政府より所得制限なしで全国民に対して一律10万円の給付をする旨の方針変更の発表がありました。以前の給付案よりは高く評価はできるものの、その給付にあたっては上記のような「窓口申請主義」にこだわっての感染拡大を引きこさぬよう、政府に対して十分な施策上の配慮を求めます。

<②申請主義では、そもそも救済を必要とする人のところへ支援が行き渡らない>

 現在、国会において「全世帯への現金一律給付」を主張する野党側の質問に対して、安倍総理と麻生財務大臣から「麻生政権時にリーマンショック対策として、全世帯に現金を一律給付する『定額給付金』を2009年に配ったが、効果はあまりなかった」という趣旨の答弁が行われております。

 ですが、名無し会事務局のSNS連絡用グループや、会の広報用Twitterアカウントで「そもそもこの定額給付金を受け取ったか否かを教えてほしい」旨呼びかけたところ、受け取ったという回答17名に対して、受け取っていない(そのような制度があると当時知らなかった)とする回答が26名にのぼりました。(実際、申請しなければ受け取れない給付金でした)

 また、政府による「一律休校」の要請により休業した保護者への給与を支払った企業に対して日額最大8330円を助成する制度(小学校休業等対応助成金)の受付も、3月18日から開始されているのですが、4月5日までの全国での申請件数はわずか1000件ほどにとどまり、そのなかですでに交付されたのが6件であることが、衆議院議員の畑野君枝氏の問い合わせに対しての厚生労働省の正式な回答として判明しております。これら補助金は今後順次支払われるとしても、申請数の少なさから、制度の完全な浸透という状況は到底望めないことは明らかです。また、申請そのものに多大な労力が強いられる事自体が、多くの個人・企業にとっては大きな負担であることも問題です。政府、各自治体の救済支援において申請主義に頼りすぎない施策を行うよう、重ねて要請します。

<③申請主義によらない経済支援策として、各種社会保険料等の一年間の免除と、水道光熱費の免除、および消費税の撤廃を行うこと>

 申請主義によらない具体的な経済支援策として、名無し会では全国民と全企業に対して以下の各項目を一年間免除し、これを国と地方自治体が全額肩代わりすることで「すべての国民・企業に対して、公平・平等・迅速に届く支援」とするよう要請します。

・国民年金保険料
・厚生年金保険料
・雇用保険料
・労災保険料
・国民健康保険料
・健康保険料
・住民税
・法人住民税
・法人事業税
・電気、ガス、水道の利用料金(ただし水道光熱費に関しては、背信的な利用に関しては調査し、これを罰すること)

 これらに加えて、「消費税」に関してその在り方を見直し、これを撤廃するよう要請します。

<④東京都の休業要請協力金はこれまでの支援策で最も的確でわかりやすい。国と他の道府県もすぐに同様の施策を>

 4月10日、東京都の小池百合子知事は、都の休業要請に従った企業に対し、1社1事業所で50万円、複数事業所の場合は100万円を一律「感染拡大防止協力金」として支払うことを発表しました。これは、現在までに本邦で行われた救済施策の中で最も単純明快で分かりやすく、特に零細事業者にとっては大歓迎の施策であると思われます。

 名無し会としては「申請主義」を批判する立場上、この支援策もできるだけ「申請」によらない処理を組み入れての実施を望みますが、東京都の取り組み自体は最大限に評価できるものとして、同様の策を国と他の道府県も早急に実施するよう要請します。

(*④-1)ただし、この「感染拡大防止協力金」は、発表直後の4月16日からすぐに休業に入らねばならず、あまりに早急な要請となっています。17日以降であっても休業に応じる姿勢の企業に対してきちんと給付するよう、東京都には常識的対応を求めます。

(*④-2)この声明の作成中に、神奈川県、ついで大阪府が東京都と同様の施策を表明しました。併せて支持を表明したいと思います。

(以上)

事務局長声明004

https://www.nanashikai.org/wp-content/uploads/2020/04/事務局長声明004.pdf