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対独戦勝75周年記念式典への参列反対に関する外交安全保障部会声明

令和2年4月3日
名も無き市民の会外交安全保障部会部長・藤田尚真
名も無き市民の会外交安全保障部会

 我々、名も無き市民の会・外交安全保障部会は国際政治及び将来的な安全保障構造を鑑み、首相の対独戦勝75周年記念式典への参列に反対する旨の声明文をここに発布する。

 先日、参議院予算委員会において鈴木宗男氏による質問中に安倍晋三首相がロシア連邦での対独戦勝75周年記念式典への参加を検討しているとの答弁があった。
 長期化している北方領土問題の解決や、政権にとって悲願の日ロ平和条約締結の進展を見据えた訪露及び首脳会談が検討されていると推測される。 

 まず昨今のロシア連邦について、我が国が注視すべき対外政策が三点ある。欧州連合にて活動する新興右派勢力への支援や天然ガスパイプラインの西進によるEU・NATO分断政策、北方領土近海の領有権主張によって太平洋への海路を確保する東方政策、そして国際政治においても特に問題視されているのがシリア侵攻及びクリミア併合等の東欧での南下政策である。
 この侵攻には正当性があり、如何なる国の脅威にはならないとロシア当局により宣伝されているが、これは西側諸国の見解とは相違しており、対独戦勝70周年記念式典の際には侵攻を非難する声明と共に西側諸国の首脳たちは式典への参列を拒否している。
 2020年現在もロシア連邦による対外政策は撤回されておらず、自由主義と国際秩序を国是とした国家で連帯する西側陣営が到底受け入れる事のできない主張も健在である。
 そんな折、対独戦勝75周年記念式典への安倍晋三首相の参列は我が国の主要な連携国である西側陣営へ国際政治において誤った意図を伝える事になり、ともすれば同盟国との友好関係に亀裂を生む事態を招きかねない。

 当会においては、混沌とした世界情勢下での同盟国との関係悪化は国家的な致命傷になりうると危惧しており、今後数十年の安全保障を考える際にも対独戦勝75周年記念式典への参列は此れを拒否すべしと結論付けるものである。
 また、かねてより我が国は対外交渉能力に深刻な問題を抱えており、特に軍事力に関して致命的な脆弱性を有している。
 歴史的に見ればこの脆弱性の発露は政治家同士の情に頼る事で防いできたが、卓上での発言力こそが肝要であり、情に頼る交渉はもって金をせしめられる結果になると我々は学んできた。我が国がこの脆弱性を国家的意志ないし政治・政策によって克服しなければ北方領土問題が真に解決する事はないだろう。

 我が国は毅然とした交渉能力と国際政治姿勢を世界各国に明示すべきであり、情勢を鑑みない訪露はこれを慎まなければならないのである。

 以上を対独戦勝75周年記念式典への参列反対に関する声明文とする。

(以上)

外交安全保障部会声明001

https://www.nanashikai.org/wp-content/uploads/2020/04/外交安全保障部会声明001.pdf